遺言書の書式や遺産相続

遺言の書式や書き方

父の遺言状は三姉妹の運命の再会

私たち三姉妹は、とても仲の良い姉妹でした。
私は三人姉妹の真ん中で、三歳年上の姉と一歳違いの妹がいました。
私の家はその土地でも有名な旧家で、私は何不自由なく暮らしていました。
私たちの両親は、私たちに大変厳しく接していました。
特に長女である姉は、私と妹の比ではありませんでした。
姉は私たち三姉妹の中でも大変な美貌の持ち主であり、同時に頭脳明晰でもありました。
父は祖父から代々受け継いでいた会社を姉に託そうとしていたのに相違ありません。
姉も小さい頃からそのように言われて育っていたので、私や妹もいづれ父の会社は姉が継いでいくのだと思っていました。
厳しい両親に期待されない私と妹は、伸び伸びと青春時代を送ることが出来ました。
これもすべて、両親の期待を一身に背負ってくれた姉のおかげでした。
でも私も妹も、そんなことはまったく考えもしませんでした。
それは私と妹がお嬢様育ちだったからなのか、小さい頃から父の会社は姉が継ぐと言われて育ったせいか、わかりません。
とにかく先の決まった出来事は娘時代の私と妹にとって、ゆるぎのない決定事項という思いがあったのです。
そんなわけで両親が厳しいながらも、私と妹はのほほんと育ちました。
しかし人の運命とはどこでどうなるのかわからないものです。
それを生まれて初めて実感したのは、私たち家族を震撼させたある出来事でした。
私は高校生で、将来は花嫁修業を兼ねての洋裁学校へ行くのか短大へ行くのか、迷っていました。
こういう時には姉に相談してみようと姉の姿を捜しましたが、見当たりません。
夜になってから母が真っ青な顔をして、姉が家出したことを家族に伝えました。
姉は大学で好きな人が出来たのです。
両親に結婚の許しを願いましたが、許されませんでした。
なぜなら姉の恋人も長男で、偶然にも姉と同じく家の仕事を継がなければならない青年でしたから。
二人の家のどちらかが折れて、一つの家庭に入るということは、とても難しいことでした。
若い恋人たちは、二人で歩む人生を選んだのでした。
そして姉のしわ寄せは、私と妹にふりかかってきたのです。
私は父から4年制の大学へ行くように言われました。
言われたというより父からの命令でした。
私は姉の代わりに会社を継ぐ人間として、運命を定められてしまったのです。
私は姉のような行動を取る勇気はありませんでした。
その為私は歯を食いしばり、父の言う通りに進むしかありませんでした。
妹も私を助けるべく、父の会社の有能な男との結婚を選びました。
私も妹も両親の悲しみや落胆を十分すぎるほど感じていました。
だからこそ自分のことを犠牲にする気になったのです。
私は独身を貫き、必死で父の会社を守っていた矢先、父が亡くなりました。
この時初めて弁護士から父の遺言を聞かされました。
信じられないことに、姉へも財産の分与が記されていました。
私と妹は激怒しました。
私たちは姉だけが幸せに暮らしている、そう思う憎らしさだけで、自分たちの数々の苦労や犠牲に耐えてきたのです。
私と妹は体を震わせ、何十年も音信不通の姉と再会しました。
私は姉の姿を見た瞬間、これは嘘だと思いました。
私の目の前には姉とは似ても似つかない女性がいたのです。
姉は私と妹に気づくと、病院のベッドから起き上がりました。
姉は恋人と別れ、苦労して育てた最愛の息子に死なれ、今は自分自身が病魔に蝕まれ、その命を消そうとしていました。
私と妹は姉の手を取り、握りしめました。
何十年分もの心の穴が、父の遺言状がきっかけとなり、埋まっていくようでした。

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